クロノプロジェクト正式連載版

第58話「潜入!ガルディア城 1」
 
 
こは、昔城から逃げた時にゲートがあった道だろ?」
「えぇ、そうよ。」
 
 
 3人はガルディアの森を歩いていた。王宮手前の森は半分が既に消えているが、東
西に伸びる森は無傷のままだった。
 ガルディアは大きく様変わりしても、この森の中の景色は大きく変わらない。しか
し、それも切り込まれていないだけ。いずれは遠くなく刈り込まれてしまう時代が来
るのかもしれない。
 マールは森の景色をみながら、そんなことを思った。
 そこにシズクが問う。
 

 
「あのさ、逃げたってどういうこと?」
 
 
 シズクの当然の疑問に、にんまりとしてマールは言った。
 
 
「フフ、クロノは昔、刑務所に捕われちゃったのよ!」
「えぇ!?なぜ?」
「う〜ん、俺は裁判では無罪だったんだけどな。」
 
 
 クロノは頭をぽりぽり掻いてぼそりとつぶやいた。マールがそんなクロノの表情に
微笑みつつ続きを話す。
 
 
「…大臣に化けていたヤクラの陰謀でね。クロノはあと少しで死刑になっちゃう所だ
 ったの。でも、私達は城からクロノを連れて脱出したのよ。」
「私達って、他にも誰かいたの?」
「えぇ、ルッカが。あ、シズクには教えていなかったけど、私達の旅はルッカがいた
 から出来たのよ。ルッカって凄く頭が良くて格好良いのよ!同じ女の子なのに、私
 なんて何もできないけど、ルッカはどんな難しいことでも解決して見せてくれちゃ
 うの。すっごいのよぉ〜。」
「へぇ、私も会ってみたいわぁ。」
 
 
 クロノはシズクの反応の良さに、今ルッカがいない事を残念に思った。でも、この
旅のどこかで、もしかしたらルッカと会うときが来るかもしれない。その時はきっと
自分達の旅も違う何かを見つけている…そんなことが頭に過った。
 
 
「シズクなら、きっとルッカと気が合いそうだな。」
 
 
 クロノの言葉に、シズクは微笑んで言った。
 
 
「そうね。でも、その…ルッカさん?は、
 クロノ達が襲撃された日は一緒にいなかったの?」
「えぇ、招待はしていたのよ。ルッカも必ず出席すると言っていたんだけど…街でも
 何か起きていたのかなぁ。」
 
 
 シズクはマールの言葉に自分の口の軽率さを呪った。しかし、クロノはそんな彼女
を察してくれたようだ。
 
 
「きっと、ルッカも無事に生きているさ。」
「…えぇ。」
 
 
 彼は優しい。マールは勿論、色々な人に優しい。クロノを見ていると、どんな困難
なことがあっても乗り越えられる。…そんな強い気持ちにさせてくれる。シズクはそ
んなクロノの強さがどこから来ているのか気になった。
 まだ僅かな時間しか彼の姿を見ていないが、彼は本当に隙が無い。いつもどこか違
う何かを見ている気がする。でも、それは常にではないこともわかる。しかし、それ
が何であるかはわからない。
 そんなことを思って歩いていたシズクだが、ふと自分達はどこまで進めばいいのだ
ろうかと疑問を感じた。この辺りの森は随分と樹齢が古いようで幹が太い。道には落
ち葉が絨毯の様に綺麗に重なり敷き詰められて覆い、月明かりでも見通しは随分とい
い。
 

「ねぇ、何処まで進めば良いのかしら?」
「あ!?ごめんごめん!えーと、もうすぐ先よ。」
 
 
 マールはもう少し先と言ったが、前方には特に変わった物は無かった。
 クロノもさすがにマールのガイドに不安になったのか尋ねる。
 
 
「どこなんだ?」
「えーとっねぇ〜、う〜ん、確かこの辺りなんだけどぉ、どこだったっけなぁ。」
 
 
 マールが何やら前方にある巨木のうちの一つに目を留め、小走りに近づくと幹の周
りを周りだした。そして、何かを見つけたようだ。
 
 
「あった!これよ!」
 
 
 マールは幹から伸びる途中から折れた枝を下げた。枝はまるでレバーを下げる様に
下に降りた。すると、地面からガチャガチャという音がして地面が盛り上がり、その
下からはぽっかりと階段が月明かりに照らし出された。
 
 
「…相当古そうね。」
「えぇ、王国が建国される前からあったと聞くわ。」
「マジか?そんな頃から逃げるのに作られていたのかよ。」
「ううん、私もよくは知らないけど、昔父上が私に話してくれた話では、元々は違う
 目的だったって話よ。」
「…つまり、元々この城が立つ前に既にあったのかもしれないってことね。」
「そうなのかなぁ。でも、ここは王族だけが代々語り継いでいる抜け道なの。王族以
 外には決して口外してはならないと言っていたわ。」
「ま、とにかく入ろうぜ。」
 
 
 二人は頷ずくのを確認すると、クロノがまず先頭に中に入った。そのあとをマール
が、その後ろをシズクが続いた。
 
 
「そろそろ明かりを付けても良いだろう?」
 
 
 クロノがランプを開く。
 

「えぇ、ちょっと待っててね。…はい!」
 
 
 シズクが火の魔法で火を付けた。クロノは火がついたのを確認すると歩き始めた。
 
 
「シズクって凄いよね。まるでジャキみたい。」
「ジャキ?」
「中世の時代に魔王っていたじゃない?」
「魔王?えぇ、魔王戦争の首謀者ね。この前中世にいたから存在は知ってるわ。」
「その魔王がジャキっていうの。」
 
 
 シズクの目が点になった。
 
 
え?、……マール達って色々な歴史上の人物に会っているのね。」
「ヘヘヘ。でね、ジャキは魔王って言われたくらいだから、どんな効果の魔法でも使
 えたのよ。天の魔法を使う時もあれば、火の魔法も使えたりするの。凄いでしょ?」
「凄いわねー。きっとESバランスが突出して高いのね。」

「ESバランス?」
「う〜ん、魔法はドリストーンと呼ばれる物質によって生み出されるの。」
 
 
 その後の説明はこうだ。
 
 ★エレメントストーンとESバランスについて
  魔法に属性を与える存在が「エレメントストーン」であり、この物質は人体を含
 めたあらゆる物に含まれている。しかし、その量にはそれぞれに違いが有り、人に
 よって偏りが出てくる。物質の総量の中で突出して高いものがその生物や物体の属
 性となり、例として天属性のクロノは天のエレメントストーンを高く含有している
 といえる。
 
  ジャキの場合はこの属性バランスが高いレベルで均衡を保っているため、全ての
 魔法の発動が可能。

 
 
「えっと、私が水の魔法だけしか使えないのは、そのESバランスというのが水の属
 性に片寄っているってこと?」
「そうよ。でも、その片寄りの量は個人差はあってもそれ程大きくは無いの。でも、
 魔法を使えるレベルのドリストーンの影響を受けている人はそう多く無いから、魔
 族と普通の人間という区別が生まれたのね。たぶん、ジャキさんはどんな魔法も使
 えたということだから、エレメントストーンのバランスが高い位置で均衡を保って
 いられたのね。」
「う〜ん、難しいなぁ。でも、シズクって物知りぃ!いつも感心するよ〜。何処で知
 ったりするの?」
「フフフ、秘密!まぁ、そのうちマ−ル達もわかるわ。」
「そうかなぁ?」
「おい、行き止まりだぜ?」
「え?」

 
 
 クロノに言われて前方を見ると確かに行き止まりだった。
 マールが前に出て前方の壁を触って何かを探している。
 
 
「う〜ん、確か父上の話では…」
 
 
 マールが突き当たりの壁を一枚一枚押し始める。すると一つの壁石が中に窪んだ。
 
 
 ガラガラガラガラガラガラガラガタン!!!
 
 
 壁が音を立てて下がった。
 壁は下がると階段になった。
 
 
「すげぇ。」
「行きましょう。」
「うん。」

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