クロノプロジェクト正式連載版

 第80話…最終話「海の向こうへ」
 
 
 の頃、外ではピエール達がクロノ達が出てくるのを待っていた。そこに基地の戸
口から人が1人出てきた。
 その姿は彼等の期待する者の姿では無かった。
 
 
「ゲルディ!?!」
 
 
 ピエールの驚きの声と同じくして、全員が構える。すると、周囲から一斉に気配が
し始めた。
 なんと、ゲルディが登場したのを確認すると、隠れていた囚人達が一斉に出てきて
ピエール達を囲んだのだった。
 
 
「くぅ、ダメじゃッたか。」
 
 
 ピエールは最後の望みを断たれたことを悟ると、即座に全員の撤退に頭を切り替え
ようとした。しかしその時、
 
 
「お前等ぁ!!!!
 俺の言うことを聴け!!!」

 
 
 ゲルディが周囲に叫んだ。
 すると、周囲からも即座に彼への勇ましい返事が返る。
 
 
「オス!」
 
 
 ゲルディは周囲を睨み回すと続けた。
 
 
「戦は終わりだ!」
「オス!!………え?」
 
 
 囚人達は思わず聞き違えたかと戸惑いの表情を見せるが、ゲルディは訂正するでも
なく言った。
 
 
「分かったか!!阿呆共!!
 俺が一度しか言わねぇのは知ってるな!!」

 
 
 ゲルディの念押しの発言に、囚人達は困惑の色を隠せない。そして、遂に反発の声
も聞こえ始める。
 
 
「何故だ!今がチャンスじゃねぇか!!!」
「そうだそうだ!!!」

 
 
 囚人達は互いに叫び、ヒートアップする。
 その騒ぎに、ゲルディは眉間に皺を寄せ大声で怒りを含んだ声で叫んだ。
 
 
「おめぇら!!!
 異義のある奴はこの俺が直々に今始末する!
 どいつだぁ!!!」

 
 
 彼の言葉は、囚人達は一瞬で静めた。
 囚人達は皆彼に従うことを決めたようで、武器を降ろした。
 
 突然の意外な展開にピエール達ルッカハウスの人々も困惑していた。
 ピエールが代表して尋ねる。
 
 
「どういうことじゃ?」
「どうもこうもねぇ。言った通りだ。
 無意味なことは、お互いもうよそうじゃないか。」

「御主の言葉を信じたい所じゃが、そのような弁説にワシは何度苦渋を嘗めたかのぉ?」
「…言いたいことはわかっている。だが、あんたらに選択の余地は無いはずだ。俺が
 あんたらを抹殺する気なら、さっさとやっている。…俺は無駄が嫌いでな。
 
 
 ゲルディはそう言うとつばを吐き、機嫌悪そうにピエールを睨んだ。
 ピエールはそれに怯む事なく、冷静に話しかける。
 
 
「ふむ、確かにその通りじゃ。ワシらには余裕は無い。だが裏を返せばあんたらも余
 裕がないということじゃな。つまりは、余裕ができてからジワジワとまたやりかね
 んということじゃろう?」
フ、何とでも思うが良い。
 …だが、互いの置かれた状況をもう一度よく考えてみることだな。
 …クロノ達は中で無事眠っている。さっさと気が変わらなぬ内に連れ帰るが良い。」
 
 
 彼はそう言うと、周囲に向けて再び念押しするように大声で叫んだ。
 
 
「お前等ぁ、言っとくが手出しするなぁ!!!
 手を出した奴は命が無いと思え!
 理解できたお利口野郎は、さっさと散れ!」

 
 
 囚人達は彼の言葉を聞くと、即座に従って一斉にその場から去っていった。
 
 
「ゲルディ、御主…」
「さっさとしろ。気が変わっても知らんぞ。」
 
 
 その後、ルッカハウスの仲間達は基地の中から5人を運び出した。
 ゲルディはその間周囲を監視し、帰りもピエール達を送り届けて去っていった。
 ピエールはその帰り際に、ゲルディから小さく丸めた手紙を受け取った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 がつくと立っていた。
 どこだろう、ここは。
 
 寒い。
 とても寒い。
 …そして、冷たい。
 
 見覚えが有る。
 …随分と寂れちまってるけど、トルースか。
 
 雨か。
 通りで寒いわけだ。
 こいつは、すぐに止みそうにないな。
 
 
 俺は何故か分からないけど、ここに立っていた。
 でも、そんなことはどうでも良い。
 早くこの凍えそうな程冷たい雨と寒さから抜け出したい思いで、思わず自分の家に
向けて走った。
 
 それにしても、ひでぇな。
 何でこんなになっちまったんだ?
 
 
「痛い!」
「助けて!」
「辛い!」
「やめて!」

 
 
 なんだ?
 どっから聴こえたんだ?
 
 
「なんてことをしてくれたんだ!」
「あんたのせいよ!」

 
 
 思わず足を止めて周囲を見回したが、辺りには誰もいない。
 そうさ、いるはずなんて無い。
 こんな雨の中を傘もささずにうろついている奴なんていない。
 いや、俺がいるか…はは。
 
 俺は再び走った。
 俺の家は市街地の南東のブロックにある。
 
 こんなに寒い日だ。
 きっと母さんは暖炉に火をくべて、マールと茶でも飲んでるんだろうな。
 そして、笑ってるんだ。俺のどじっぷりをさ。
 
 でも、俺の思っていたものはそこに無かった。
 
 
「どうしてだよ!!!」
 
 
 俺は思わず叫ばずにはいられなかった。
 だってさ、これ、未来だぜ?
 俺の知っているあの時じゃ無いんだよ。
 
 いや、知ってるさ。
 そんなこと…。
 
 
「クソォ…。」
 
 
 俺は既に壊れたドアを殴り壊した。
 ここは、俺の知っている世界じゃない。
 
 
「ん?」
 
 
 気配がする。
 突然なんだろう。
 
 俺が殴り壊したのを見てたのか?
 いや、音?
 
 
「お前らの責任を誰が取ると思ってんだ!」
 
 
 俺の正面に立つおっさんが言った。
 そのおっさん、とても着ている服がボロかった。いや、彼だけじゃない。
 周囲にいる人はみんなボロボロの服を着ている。
  
 
「なぁ、どうなってるんだ!?教えてくれ!!
 俺には分からないんだ!!!」

「お兄ちゃんのせいで、お父ちゃんは…」
 
 
 俺の言葉に反応したのは一人の少女だ。
 それも見覚えが有る。
 あの時の、旧市街にいた…あの子だ。
 
 はは、丁寧に教えてくれるんだな。
 みんな厳しい目をしている。
 次々に俺へ様々な罵声が投げ掛けられ始める。
 
 
「この子のお父さんを返しなさいよ!!!」
「そうよ!子どもじゃないんだから、責任取りなさい!!!」

 
 
 痛い。
 でも、そうだよな。これが俺のした事。
 逃れられるわけない。
 だけどさ、何を言えば良いんだ?
 
 
「…すまない。こうなるとは思ってなかったんだ。」
「そんな軽い気持ちでされたらたまっともんじゃないわ!」
「お前のせいでどれだけの人が亡くなったと思ってるんだ!
 見てみろ!お前のしたことの結果を!」

 
 
 俺の目前に沢山の亡骸が迫ってくる。
 でも、敵意は無い。…殺意が感じられないから。
 みんな苦しいんだな。
 
 亡骸が俺の腕を掴む。
 俺の足を、髪を、手を…全身を引っ張る。
 
 痛い。
 何をすれば許してくれる。
 
 そもそも、許してくれるのか?
 そんなものがあるのか?
 
 俺、知ってるんだ。
 でも、認めたくない。
 
 だけど、確かに俺はみんなの言う通りだと思う。
 
 
 沢山の亡骸は俺から突然手を離した。
 俺は突然過ぎて戸惑ったけど、そこにマールの声がしたんだ。
 
 
「クロノ!」
 
 
 嬉しい。
 すげー、嬉しい。
 
 
「クロノ。」
「マール!」
 
 
 俺はすぐに彼女に駆け寄った。
 彼女も微笑んで待っていてくれた。
 
 
「守ってくれなかったのね。」
「え?」
 
 
 俺は思わず凍った。
 
 
違う!…いや、そうだ。だが、必ず助ける!
「遅いわよ。もう。」
「そんな!?」
「…時は取り戻せないわ。一度間違ったら終わりよ。」
「そんなことはない!」
 
 
 俺は彼女の手を掴もうとした。
 だけど、彼女は俺の手を払いのけた。
 でも、そんなことで引き下がる俺じゃねぇ!
 
 
「いいえ、間違いは取り消せないわ。」
「俺は必ず助け出す!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 クロノは叫ぶよう起きた。
 そこはベッドの上だった。
 周りを見ると地下室の中の様だ。
 
 …どうやら夢だったらしい。
 
 その時、クロノの叫び声を聞いてシズクが走ってやってきた。
 
 
「大丈夫?」
「…シズク?あれ、俺は…。」
 
 
 クロノは夢だと気付くと、現実の今がどういう状況なのかがまず気になった。
 あの後の記憶が全く無い。有るのは先程のイヤな夢と、ゲルディを殴ったあの時の
記憶までだった。
 
 
「もう終わったわ。」
「ってことは…勝ったのか?」
「ううん。そうじゃないの。でも、そうね、そうとも言えるかもしれない。」
 
 
 シズクはあの戦闘の後の話をした。ゲルディが助けてくれたことや、その彼が協定
を持ちかけてきたことなどを聞いた。
 
 
「そうか。そんなことが。ところで、おれはどれくらい眠ってたんだ?」
「三日よ。全身が強い圧力下にあったことで至る所で内出血していたわ。無理も無い
 けどね。あんな圧力を長く受けていたんだもの。」
「三日か。…。」
「マールのことを考えているの?」
「…」
 
 
 クロノは俯き、強く拳を握りしめた。
 シズクはそんな彼を心配しつつ、冷静に告げた。
 
 
「…気休めにしかならないと思うけど、ディアはマールを殺しはしないわ。
 彼はあなたを誘っているから。」
「あぁ。…パレポリへ行く。」
「…そうね。それしかないわね。」
 
 
 クロノはその後着替えてピエール達のもとに現れた。
 ピエール達は椅子に座ってテーブルを囲んでいた。
 
 
「クロノ殿、お目覚めになられましたか。気分はどうです?」
「お腹は空いていませんか?すぐ用意致しますよ。」
 
 
 ピエールとナリヤの心配の声に、クロノは笑顔で応えた。
 
 
「…おはよう、みんな。気分は良い。だが、今は食事をする気にはなれない。ナリヤ
 さん、気を使わせてごめん。」
「いいえ、でも、何かお腹に入れた方が良いわ。ホットミルクを作るから飲んで頂戴。」
「…ありがとう。」
 
 
 ナリヤはにっこり微笑むと、立っていそいそと部屋を出て行った。
 クロノはシズクと共に席についた。
 クロノが席につくと、フォルスがまず口を開く。
 
 
「…初めは息子の言葉を半分当然に思っていた。だが、あんたの姿を見ていて、俺達
 は表面しか知らないことをよくわかったよ。すまない。」
「良いぜ。気にして無い。それより、みんな無事で良かった。紆余曲折はあったけど、
 こうしてみんなと会えて本当に俺良かった。…せめてもの救いだよ。」
 
 
 クロノの言葉に、ピエールが微笑んで言った。
 
 
「あなたはただの無謀な人ではないと思っていましたよ。」
 
 
 その言葉に、クロノは正直戸惑った。
 特にあんな夢を見た後には。
 
 
「へへへ、止してくれ。無謀なままさ。だけど、俺は無謀なだけじゃない。
 …諦めも悪いんだ。
「助けに行かれるのですね?」
「勿論。確かメディーナに行けると言っていたな?メディーナの貿易船はパレポリに
 向かうのか?」
「えぇ、パレポリと活発に貿易していますから。」
「なら、その船に乗りたい。手配できるか?」
「喜んでさせて頂きますよ。」
 
 
 クロノはナリヤの持ってきたホットミルクを飲むと、静かに席を立ち、支度をしに
部屋へ戻った。
 
 
 その後、クロノ達は海岸の桟橋に来ていた。
 少し大きな酒樽が浮いている。人が三人程度入れる大きさはありそうだ。

 
 
「この樽で行くのか?舵はどうやって切るんだ?」
舵?そんな贅沢な物ないよ。なんせエンジンすら無いからねぇ。
 全て潮任せさ。究極の省エネだろう?自然は素晴らしい!ワッハッハ!
 
 
 ブランカの言葉は二人は勿論、周囲の人間も目が点になり呆れた。
 シズクが慌てて尋ねる。
 
 
ねぇ、どうゆうこと!?つまり、見つからなければそのまま漂流よね?」
その通り!ま、私の計算を信じたまえ!私の計算は完璧だ!
 だーはっは!!
「うそぉ…。」
 
 
 シズクはため息をついた。
 一方クロノはというと、すぐにでも出発したい様子だった。
 その様子をみて彼女も仕方ないと決意を固めた様だ。
 
 
「計算狂ってたら化けて出るからね!」
狂い?有るわけないじゃないか!この天才の辞書に間違いや狂いなんて言葉は
 ないよ。大船に乗った気持ちで安心したまえ!
「………天才ねぇ。」
 
 
 シズクは呆れ顔隠さなかった。その表情にブランカ以外の全員が苦笑しつつも、
彼女の気持ちに同意していた。
 クロノはルッカハウスの人々に別れの挨拶を告げる。
 
 
「みんなありがとう。
 もう出発したい。…元気でな!
 
 
 クロノの言葉にフォルスが答える。
 その両隣にはトーヤとナリヤが立っていた。
 
 
「あんたもな。」
「必ずクロノさんならマールさんを助けられるわ!」
 
 
 ピエールも二人の無事を祈り言った。
 
 
「翼有るガルディアに栄光あれ。」
 
 
 彼の言葉にクロノが力強く頷いて見せた。
 そこにトーヤも元気よく別れの言葉を告げた
 
 
「また来てくれよなぁ!!!」
「あぁ!またな!」

 
 
 二人はそう言うと、ブランカの手助けを得て樽の中に入った。ブランカが蓋を閉め
ると、繋留していたロープを解いた。
 樽は自然の力で次第に遠ざかっていった。
 
 
「元気でなぁ〜〜〜〜!!!!」
 
 
 トーヤの声が木霊する。
 二人は大海原に、潮の流れに任せて静かに旅立っていった。
 
 
★クロノプロジェクトをご覧の全ての皆様へ、
 作者よりご挨拶。

 
 
 て、今週で最後となりましたシーズン1。
 とっても長い期間の連載で、正直どこまでやれるか自分との勝負という感じでした
が、なんとかこなす事が出来て安堵しております。
 相変わらず文才が無い私故に、表現は勿論、表現以前の誤字脱字や誤用など様々な
ご指摘を受ける始末で、まぁ、本当に作品としてはお粗末な品質であることは間違い
ありません。この場で本当に申し訳ないと謝罪させてください。(^^;
 でも、それでも公開できたのは「文才無き故」でもあったりして、これだけだらだ
らと長い物語を続けてこられたのは、半ば開き直りとも取れる品質への割り切りがあ
ったからとも言えて、自分がつくづく小説家を目指していなかったことが幸いしたと
思います。(おい)
 勿論、自分だけで続けられたわけではありません。
 この物語への制作を協力してくださった方々をはじめ、沢山の感想や署名を下さっ
たご覧の皆様や、親不孝者の息子に時間を与えてくださった両親無くして、この様な
制作は出来なかったに違い有りません。
 皆様には本当に温かく、時には厳しいお叱りも頂き、大変有難い事だと思っており
ます。ホントですよ!やっぱ、叱るんだって、見てくださっているからなわけでして、
本当に貴重なことだと思います。
 
 この制作中には色々なことがありました。
 ここ半月だけでもとんでもないことになっていたりしますが、人生の転換期といい
ますか、誰か助けてくれな日々を送っております。(^^;
 私のブログ的(?)嘆きの声を書いた掲示板をご覧の方はおわかりかもしれません
が、会社辞めました。突然の事で全く備えが出来ておりません。内憂外患状況でして、
内も外もハッキリ言って安心できないですな。(^^;
 よくよく自分の性格的な面もあってか、トラブルも多いですし、助けてくださる方
もいる一方で、容赦なく突き刺してくる方がいるのは辛いなと思います。しかし、そ
んな経験をして、人は強くなるんだな!…と思ってみようと思ってます。(え)
 
 この物語を皆さんにお届けする頃には、丁度東京におります。
 クロノ・センターのトップでも広告されております「10+6年の軌跡」という、
このクロノシリーズのオンリーイベント(平たく言えば、同人作品即売会)に行く為
だったりしますが、それ以外にもなんか人生色々で、厳しい事柄が私に襲いかかって
おります。(おい)
 イベントに当日こられる方で、生でクロノについて私とお話ししたいという方は、
連絡先を下記に明記しておきますので、そちらにメールをまずいれておくと、当日確
実に私に会うことが出来ると思います。
 まぁ、当日会えなくとも、22〜28日の期間中は東京に滞在しておりますので、
個人的にどうしても会いたい!って方は、メール下されば時間を作ります。(笑)
 
 本当に人生厳しいなと色々なことで実感する今日この頃ですが、だからと笑いとか
感動とか、そういった感情を失う生活をしてはならないと思いを新たにして。
 
 icow●chronocenter.com
(●に@を入れると完成です!)
 
 
CPシーズン1最終編集
2005年9月19日AM1:32:05秒
 
 
 クロノプロジェクト・シーズン1「New Worlds」終わり。
 長い間有り難うございました。m(__)m
 
 シーズン2は準備が出来次第、サイト上にてご案内致します。

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 前回  トップ  season2へ

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 お読み頂きありがとうございます。
 拙い文章ですが、いかがでしたでしょうか?
 
 宜しければ是非感想を頂けると有り難いです。励ましのお便りだと有り難いです
が、ご意見などでも結構です。今後の制作に役立てて行ければと考えております。
 返信はすぐにはできませんが、なるべくしたいとは思っておりますのでお気軽に
是非是非お寄せ頂ければと思います。

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 今後ともクロノプロジェクトを宜しくお願いします。m(__)m