クロノプロジェクト正式連載版

第60話「潜入!ガルディア城3」
 
 
 の最上階へと駆け上がるクロノ達。
 最上階へと辿り着くと警備兵が二人並んでいた。
 
 3人はそれを確認すると素早く強行突破する。
 クロノがドアの左側の兵を、シズクが右側の兵をそれぞれ倒した。
 そしてクロノがドアを強引に蹴り開ける。
 
 部屋の中で3人の目にまず止まったのは、正面のテラスへ通じる窓の側に一際豪
華な応接セットがあり、そこに座る四名のゴージャスな服を纏った女性達の姿だっ
た。
 
 
「お前達が支部長か!?」
 
 
 突然の出来事に驚く4名の女性達。
 いずれも服に負けない美貌とスタイルを持った、誰が見ても美人と言える容姿を
持っていた。その中の一人…長いプラチナブロンドに輝く髪の女性が、クロノの問
いに答えた。
 
 
えぇ?私達ぃ〜!?そんなのあり得ないわ〜。
 ねぇ?エカチェリナ。
 
 
 プラチナブロンドの女性は、向かい側に座る桃色の美しい髪をした女性に同意を
求めた。エカチェリナと呼ばれた彼女は、その美貌からは想像の付かない早口の口
調で同意する。
 
 
…あんなダッサイのと一緒にしないで欲しいわね。
 
あ、そうそう、エリザベス、おたくこの間抜け駆けでディトンのバック買
 ったでしょう?一緒に入荷したときにみんなで揃って買うって決めた
 わよねぇ?しかもその色、私が欲しいって言ったピンクじゃない!
 おたく確かブルーが欲しいって言ってたわよね?

 
 
 エカチェリナの指摘は図星だったのか話題を変えようと、エリザベスは隣に座る
水色の髪を2つに束ねた、少女のような無垢な可憐さを感じる女性に話題を振った。
 
 
「あー、えっとぉ、まぁ!イザヴェラちゃん!
 今日も一段と可愛いわねぇ!もう、お姉さん思わず抱きついちゃうわ〜!」

 
 
 がばっと抱きつくエリザベスに、イザヴェラは笑顔で彼女に言った。
 
 
「ディトンのバック、私も欲しいもん!」
 
 
 その一言は彼女を凍りつかせるには十分だった。しかし、そこにエカチェリナが
イザヴェラに言った。
 
 
「イザヴェラ、お宅また私のマニキュア使ったでしょう?」
「さ、さぁ、私知らないもん!ヴィクトリアちゃんに聞いて!」

 
 
 そういってイザヴェラは隣に座るヴィクトリアを見た。
 ヴィクトリアは紫の瞳に黒い肌の女性で、黒い髪を上にまとめた独特のヘアスタ
イルをしており、この4人の中でも一際異質なキャラクターの持ち主だった。
 エカチェリナもヴィクトリアの方を向くと、彼女は独りの世界に入っている様だ
った。
 
 
「…ああ、………今月もお給料足りないわぁ。」
 
 
 エカチェリナはいつものことと苦笑して、そのままクロノ達に向き直った。
 シズクは半ば呆れつつ問い掛けた。
 
  
 
「…ふぅ。この部屋、支部長の部屋じゃないの?」
 
 
 
 シズクの問いにエカチェリナより先にイザヴェラが答えた。
 
 
「そうよ〜。でも、私達は嘘はつかないもん!ねぇ〜?チェリ〜ちゃん?」
「イザヴェラの言う通りよ。そんなに会いたいなら、そこのおやじに聞けば?」
 
 
 エカチェリナが指を西側の壁側に指した。そこには四人の女性達とは対照的なエ
リアがあった。
 見るからに平凡で安そうなステンレス製の机に「支部長」と書かれた木製の札が
置いてあった。そして、その机の座り主ではないかと思われる中年のおやじが隅で
蹲って隠れていた。だが、どうみても無理のある隠れ方だ。
 
 
!?お、おい、お前達!何で俺に振る!!」
 
 
 クロノ達はあまりにも見窄らしい男の姿に驚いた。
 シズクが呆れながら尋ねる。そのまなざしは冷たく見下していた。
 
 
「…もしかして、あなたが支部長?」
「ち、ちがうよぉ〜だ。」
「…そうよねぇ。こんなに警備が薄いはずないもの。たぶん、本物はもういないの
 か、それとも私達を後ろで狙っていると見るべきかしら。」
 
 
 シズクの言葉に即反応したのは支部長らしきおやじではなく、4人の美女(?)
達の方だった。
 エリザベスが手を額に当てて、オーバーアクションでさもショックである事を表
情に出して言った。
 
 
「あらぁ〜?私達いまいち信用無いのねぇ。ショックー。」
「もう!あの人があなた達の探してる正真正銘の支部長さんよ!私達は嘘は言わな
 いもん!ブーブー!」
「…はぁ、欲しいわぁ。サンオブサン。」
 
 
 女性達の反応に3人は脱力感を覚えつつも、確かに彼女達は嘘は言わなさそうに
思えた。3人は再度中年の男の方を見た。
 マールがオヤジの顔をみていて何となく引っかかるものがあった。その姿はとも
かく…声と良い、このセコイ性格と良い、…過去に見た誰かに似ている。
 
 
「う〜〜〜ん、あ!?!あなた!?…ヤクラでしょ!!!」
「げっ!?!何故分かった!」
「どっかで見たこと有ると思ったもの!
 …父上や国のみんながどんな目にあっているか分かっ
 ているの!!!」

 
 
 マールが怒りの形相で詰め寄る。
 ヤクラはあまりの勢いにさっと壁際にゴキブリのようにそろりそろりと美女達の
方へ逃げつつも、しっかりと言い返してきた。
 
 
「へ!俺様の知ったことか!」
「言ったわねぇ!」

 
 
 マールは魔法の詠唱を始める。何時に無く怒っていた。
 
 
「ヒィィィィ、お、お前達!出番だぞ!!!」
 
 
 ヤクラが女性達に呼び掛ける。
 すると独りの世界に入っていたヴィクトリアが、突如シャッキリと椅子から立ち
上がりヤクラに向かって言った。その目にはゴールドの文字を浮かばせて。
 
 
前金で1万G小切手で。後金で10万G頂きますわ。
 あ、後金の方は分割払いもお使い頂けますわ。一応、上司と言うことで分割手数
 料は断腸の思いで私達がご負担致します。宜しいですか?」
 
 
 ヴィクトリアが女神の微笑みを向ける。
 しかし、その向けられた相手は青ざめて言った。
 
 
「た、高い!?もっと安くならんのか!!!」
 
 
 彼の言葉は女神の表情を瞬時に変貌させた。その顔は冷酷で見るものを石に変え
るような鋭い視線だった。
 
 
「…本来、私達を拘束している時間に対して、一時間につき1人当たり1万Gが発
 生致しますが、総統閣下の特別のご命令にてこちらに赴いております故、その負
 担額は麗しのミアンヌ特戦隊、春のわくわく特別キャンペーンという形で例外的
 に4分の1に減額させて頂いております。ですから、これ以上の勉強はできませ
 んわ〜。ホホホ。」
 
 
 ヤクラの頭の中で札束がごっそり羽ばたいて行く羽音が聴こえたような気がした。
 
 
「チィ!警備の金も切り詰めてると言うのにぃ〜!
 くそぉ!お前達の力は借りんでも何とかするわい!!!」

 
 
 担荷を切る様にヤクラが言うと、全員がすっくと椅子から立ち上がり、エカチェ
リナが代表して言った。
 
 
「ま、死なない程度に頑張ってね。今月の給料はまだなんだから。」
「ねぇ、お暇が出たから、今から街へ行きましょ〜?」
「わぁ!楽しそう!行こう行こう!私ジェニーズに行きたい!この前見たポヨゾー
 ちゃんのぬいぐるみ買うのぉ♪」
「はいはい。わかったわかった。」
 
 
 四人の女性達はそう言うと、モデルの様に1人1人颯爽と途中でポージングを決
めて部屋を出て行った。その様は本当にショーのようにゴージャスな一時だった。
 二人が呆気にとられていた中、マールはしっかりと魔法の準備を終えていた。
 
 
「…もう、あなた1人よ。覚悟は良いわね?」
 
 
 マールの言葉にヤクラは突然驚いたかのような表情を見せると、突然低姿勢にな
りゴマをするように手をスリスリと気持ち悪くすり寄ってくる。
 
 
「…な、なぁ、さっきはそのぉ…ああは言ったが、あれは奴らへの体面の上の問題
 でな?…悪気はなかったのだが、そのぉ、今回は〜…無かった事には〜〜〜、な
 らんかな♪………?」
 
 
 必死に低姿勢に願うヤクラに、彼の無駄な努力を宣告した。
 
 
「ならない!」
 
 
 マールがアイスを炸裂させる!
 何時にも増して怒っているマールはアイスを連打で打ち出した。怒濤のごとく氷
の刃がヤクラを襲う!
 しかし、ヤクラもなかなかやるもので、必死に火の系統のエレメントで直撃を防
いでいた。だが、敵はマ−ルだけでは無い。クロノがヤクラに向かって剣で切り掛
かろうと走り出した。それにシズクも続く。
 ヤクラは慌てた様子を見せる。しかし、途中でしたり顔に変わった。
 
 そして、突然床が抜け落ちた。
 
 
 
「!?」
 
 
 
 クロノ達はそのまま穴の下に落ちてしまった。
 下にはネットがあり、3人は落ちた瞬間にそのネットによって包まれてしまい、
身動きが取れなくなる。隅にいたヤクラは無事だった。
 ヤクラは落ちた3人にここぞとばかりに罵声を浴びせる。
 
 
「やーい!阿呆めが!
 こんな古典的な罠にかかる奴がいるとは思わんかったわ!
 ハーーーハハハハ!!ハハハのハのハァ♪」
「…くそぉ。」

 
 
 3人はその後捕まり、牢屋に運ばれた。

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