クロノプロジェクト正式連載版

第61話「潜入!ガルディア城!4」
 
 
 屋は昔と同じ地下にあった。
 相変わらず薄暗い壁面といい、年代を感じる古さと湿気が不快さをさらに高める。
 しかし、過去の脆い印象と違い完全に修復されており、堅牢で色々と出口がない
か試してみたが、魔法すら何かの力で吸収されているようだった。
 
 
普通じゃないわ!どうしてこんな時代に魔法を吸収
 できる技術があるの!?
パレポリはそんなに進んでしまっているわけ!?」
「シズク、落ち着いて。きっと何かがあるはずよ。」
「…武器も荷物も取られちゃ、どうしようもない。」
「…クロノ。」
 
 
 
 一方その頃、城の広間では…?
 
 
 
「これでワシも階級昇格か?
 あの
クロノを捕獲したんだからなぁ!」
「そ
りゃぁもう!ヤクラ様なら将軍の地位も狙えますよ!」
うかうか!ハーッハッハッハッハ!」
 
 
 
 ヤクラと部下は一緒にこの手柄に酔いしれて皮算用していた。
 彼は有頂天になっていた。なにしろ、今までセコイ手を使いとののしられつつも
こつこつ積み上げてきた地位だが、ここに来てまさに千載一遇の大出世のチャンス
到来と言えた。
 こんな機会は滅多に無いどころか、彼の上司である陸軍将軍さえ超える事が上手
くいけば出来るかもしれない。…そうなれば彼の長年のストレスの元凶からようや
くおさらばできる。彼はそう思うと感涙にむせぶ思いだった。
 だが…
 
 
 
「…そんなに楽しい話か?ならば僕も混ぜて貰おうか。」
 
 
 
 そこに現れたのは黒装束達を引き連れた彼のストレスの元凶、陸軍将軍ディア・
ノイアその人であった。ディアは空中に浮遊し寝そべりながら、ヤクラの顔を横目
に覗き込んでいた。
 ヤクラは彼の姿を見て硬直したように姿勢を正して敬礼した。
 
 
こ、これはこれは陸軍将軍閣下!お出迎えも出来ずご無礼を!」
「…フ、君がそこまで気が利かないのはわかっている。気にしなくていい。今日は
 君が僕の力を借りたかろうと思って飛んで来たよ。察しが良すぎて涙が出るだろ
 う?」
「さ、さすがは将軍閣下!お察しが良いですな!しかし、御安心を!
 既に閣下のお力を拝借せずとも、我々だけでしっかりとこのガルディアを運営し
 ております!」
 
 
 ヤクラは冷や汗をかきつつも、将軍閣下に一生懸命姿勢を正して運営が円滑に行
われている事を説明した。
 それに対してディアはというと、そんな話には興味を示さずに目をつぶって聞い
ていた。話が終わると彼は目を開いてゆっくりと地に足を付けて立ち上がる。
 
 
「僕は君がここで何をしようが一向に構わないのだよ。…わかるだろう?
「…はい。
 
 
 ディアは無表情にヤクラに語りかける。その感情の感じられない口調がヤクラの
背筋に悪寒を感じさせた。
 
 
「僕の知りたい事はただ一つ。クロノは来ているのだな?」
「は!はぁ…、お、おります…」
「そうか。しっかり生け捕りしているのだろうな?まぁ、君程度の力で倒せる相手
 ではないだろうが。」
「そ、それは買い被り過ぎかと?」
 
 
 ディアは鋭い目でヤクラを見据え言った。
 
 
「そうか?」
 
 
 ヤクラはたじろぎつつも頑張って答える。
 
 
ヒィ…いや、や、奴は簡単に私の落とし穴にはまる程のドジな奴でして、
 そのぉ、閣下は勿論、この私めでも十分に対処できる輩かと……。」
「そうか。」
 
 
 ディアはそういうと浮き上がった。
 そしてそのまま上空に上がると窓の方へ飛んで行き、外を見つめる。
 
 
「あ、あの、閣下!何とぞ私めにも今回の件はお計らい頂けるとぉ…そ、そのぉ、
 総統閣下には宜しくお口添えを……」
 
 
 ヤクラのゴマ擂りにも興味無さそうに、乾いた口調で彼は言った。
 
 
「…良いのかい?僕が口添えしても?」
「は、はい!それはもう!閣下のお言葉とあれば、有り難き幸せ!」
「…ふぅ。では、君の留任に精々努力させてもらうとしよう。僕に感謝して欲しい
 ものだ。」
「へ?」
 
 
 
 ドォォォォォォォォーーーーン!!!!
 
 
 
 砲音一声、激震が城を襲う。
 
 
「何ごとだ!?!」
「……こういうことさ。後の事は僕に任せて貰おう。
 さぁ!皆の者、私に続け!
 
 
 ディアは広間の隅々に響き渡る声を発した。すると、黒装束達は勿論、影から沢
山の気配が彼に集まり付き従う。彼はそれ引き連れ颯爽と宙を浮いて広間を出て行
った。

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