クロノプロジェクト正式連載版

第21話「新しき仲間」
 
 
 エルとレンヌはフィオナ達と共に暮らし始めた。
 
 まず、フィオナの家の近くに小屋を建て、菜園を造り、そして、手分けして森を育
てる作業を進めていった。
 森は驚異的成長をその後も示し、毎年砂漠が草原に、草原が森へと成長していった。
 
 
 そんなある日のこと。
 
 
 
「…ここが、新しい森だケロ。」
「はぁ〜、綺麗だケロ〜。」
「さすが、カエル様だケロ。目の付け所が違うケロ。」
「そうケロ!そうケロ〜!こんな素敵な森に住めたら幸せケロ〜!
 …でも、大丈夫ケロ〜?」
 
 
 この二人の蛙は南のお化け蛙の森からはるばるやって来た夫婦で、夫はカエオ、妻
はカエコといった。
 二人は不安を感じつつも、両親の反対を振り切ってここへ駆け落ちしてきたのだ。
 
 
「……う、うん。と、とにかく、あたって砕ケロ!」
 
 
 カエオはカエコを不安がらせないために強気を表現したつもりだが、彼も本心は隠
せず言葉の中に不安が見てとれる。二人は森の中を進みカエル達の家を探し歩いた。
 
 
「まだケロ〜?もう、くたくたケロ〜。」
「も、もう少し頑張るケロ〜。」
 
 
 彼らは森を彷徨い続けたが、行けども行けども森は深く繁るのみ。
 土地勘も働かない場所なため、彼らは森で迷ってしまった。
 
 
「あ〜ん、もう歩けないケロ〜!死ぬケロ〜!」
「オ、オレもダメだケロ〜…」
 
 
 二人はその場にぐったりして座り込んだ。頭上には深く空が葉で覆われている。
 葉からは陽の光が透けてキラキラと降り注ぐ。しんと静かで落ち着いた適度に冷た
い空気は、二人にしばしの休息を与えるかに思えた。しかし…
 
 
 
 
 ルル…
 
 
 
 
 何かの声が聞こえる。
 距離は遠くもなく、近くも無く。
 
 
 
「なにケロ!?」
「…あ、あんまり歓迎してない声だケロ…。こ、ここは静かに、…逃げるゲロ〜!」
 
 
 
 カエオは静かにとは言ったが、行動は全く正反対だった。
 二人は急いで逃走を始める。しかし、後方を追う気配も迫る。
 
 
 
「グルルルルル!」
「ケロ〜〜〜〜!!!?」
「ゲロ〜〜〜〜!!!?」

 
 
 
 何かが襲いかかる!
 二人は咄嗟にジャンプして避けた。そして、その飛んでいる間に宙で二人はお互い
の顔を見合わせて確認をとると、着地と同時に一気にダッシュして逃げ出した。だが、
後ろからは襲いかかってきた何かも追ってきているようだった。
 
 二人は必死で走った。走って走って走り通した。つい先ほど歩けない、死ぬと言っ
ていたのが嘘のように…。だが、彼らは逃げたはずが、最悪の場所に誘い出だされて
いた。彼らの前方には多くの木々が重なり、とても走っては逃げられそうにない袋小
路の様な地形が形成されていた。
 
  
 
「行き止まりケロ〜!」
「そんな〜〜〜!!!」
「こんなところで、あたし死ぬのいやケロ〜〜〜!」
「オ、オレもだケロ〜〜〜!!!」
「ギャァ〜〜〜〜!!!」
 
 
 二人は目をつぶり、伏せて最後の時を待った。
 
 だが、それはいつまで経ってもやってこない。それを不思議に思い、二人が目を開
けると、そこには思いも寄らぬ光景が入ってきた。
 
 
 
「そこまでだ。コイツは獲物じゃない。」
 
 
「フー!フー!」
 
 
「聞かんか!パトラッシュ!!」
「…クゥ〜〜〜ン。」
 
 
 
 パトラッシュと呼ばれている大きな狼の化け物は、カエルの命令にしたがって行儀
良く伏せをした。カエオとカエコはポカンと口を開けてその状況を見ていた。
 
 
「大丈夫か?スマン。コイツはオレのペットのパトラッシュだ。いつもは密伐採する
 輩を追っ払うために、回る様に命じているんだが…過去にもこういうこともあった
 のかもしれんな。本当にすまない。怪我はないか?」
 
 
 カエルの謝罪の言葉に、慌てててカエオが返答する。
 
 
「だ、大丈夫だケロ。」
「私も大丈夫ケロ。」
 
 
 二人が無事な様でニッコリ微笑んで剣を鞘に納める。カエオ夫妻も埃を払って立ち
上がると、カエルが質問して来た。
 
 
「そうか。…ところで、この森に何か用か?」
「あ、あの、あなたはカエル様ケロね?」
 
 
 カエルは自分を様呼ばわりする蛙の顔を見て見覚えを感じる。
  
 
「ん?君は確か南の森の主の?」
「はいケロ!息子のカエオケロ!」
 
 
 カエルは驚いた様に目を見開くと、すぐににこやかになり二人にわかる様に蛙語で
話始めた。(以下、ケロが消える)
 
 
「そうか、久々に会う。皆は元気か?」
「えぇ、いやぁ、カエル様も元気そうで!本当に会えて嬉しいです。あ、彼女は僕の
 妻のカエコです。」
「初めまして、妻のカエコです。」
「おぉ、結婚したのか。おめでとう!」
 
  
 カエルに祝福され、感激する二人。
 
 
「で、ここに来たのは、森に何かあったのか?」
「え?、いや、そう言うわけではないですが…、その…」
「その?」
「その…、あの…、えー、あー、うーん…」
「どうした?何が言いたいんだ?緊張することはない。長には良くして貰った。オレ
 で出来ることなら、なんでもしたいと思っている。」
「えーと…、実はですねぇ…、あぁ…うぅぅぅ」
 
 
 カエオはいざ言おうとしてもなかなか言葉がだせなかった。憧れのカエル様と話す
なんて、引っ込み思案な彼には難しい冒険に思えた。
 そんなカエオの心情を知らないカエルは、ただカエオが話してくれるのを穏やかに
待っていた。だが、カエオの隣にいたカエコはイライラが積もり積もっていた。
 
 
「………もーーー!、アンタ!!!いいわ!私から説明させて頂きます!」
「お、おう。」
 

 突然の威勢の良いカエコの声に驚くカエル。
 カエコは両手を腰に当てて言った。
 
 
「私たちはカエル様の住むこちらの森で、一緒に暮らしたいと引っ越してきたのです。
 しかし、私達がこちらで暮らしたくても、それを受け入れるのはカエル様方の判断
 ですから、まずお訪ねしてご相談をしたく参りました。」
「カエコ〜…それは、オレが…」
「あなたは黙っていて!」
「あうぅ〜」
 
 
 カエルはカエコの話を聴きながらにこやかに二人のやり取りをみていたが、とても
笑いを堪えるのが我慢出来なくなり、吹き出した。
 

「プクク、アハハハハハ!あぁ、のんきな奴らだなぁ。
 そうか、ここで暮らしたいのか?オレは構わないが、この森のことはフィオナに任
 せてあるんだ。だから、フィオナと相談してくれないか?」
「フィオナとは…人間の?」
 
 
 カエオが心配そうに確認する。
 
 
「おぉ、そうか、悪い悪い。大丈夫、オレが一緒に付いていく。まぁ、フィオナは他
 の人間とは違うから安心しろ。きっと良い返事をしてくれるだろう。」
 
 
 カエルに連れられてフィオナのもとへ行ったカエオ夫婦は、フィオナにも二つ返事
でOKを貰い、晴れてこの森の住人になることが許可された。
 
 二人は一緒に森を整備する活動に従事して働いた。
 
 
 その後、カエオ夫婦の一件を知ったお化けカエルの森の者達や、その蛙達から話し
を聞いた魔族達が次々とカエルを頼り、森へ集まり始める。
 

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