クロノプロジェクト正式連載版

第70話「襲撃」
 
 
 ドォォォォオオオオオオオオオ!!!
 
 
 光る閃光。
 轟く爆音。
 
 
 複数の光の弾がクロノの目前の空を過り、後方で爆音が響く。それと同時に爆風
と衝撃波が襲い、土煙を上げた。西の方角から攻撃されている。それも大砲などで
はなく、魔法の様なものに。
 集落の人々の慌ただしい声があちこちから聞こえる。
 
 
「敵の攻撃だぁ!」
 
 
 外では大騒ぎになっていた。
 次々と遠方から様々な色の光の玉が襲う。それらの光は着弾すると様々な魔法効
果が生じて周囲を破壊する。
 
 
「(エレメント!?)」
 
 
 クロノは急いで這い上がり、一際騒がしい方向に駆けた。
 
 
「シールド起動!」
 
 
 フォルスの掛け声が聞こえた。そして、その後すぐに上空が白い光の幕に覆われ
た。すると、敵の攻撃がその白い光の幕によって阻まれ始めた。
 
 
※CP豆知識「シールドシステム特性」について
  シールドはジェネレータ(発生装置)とサテライトビットによって張られる空
 間を限定する。壁のように一部を保護する場合や円範囲に張り巡らせる事も可能。
 サテライトビットの置く位置でシールドの形状は変化する。
  シールドはあらゆる魔法攻撃による攻撃から保護する。しかし、人間の体や剣
 等の武器装飾品はすり抜ける。また、強過ぎる魔法攻撃からは完全な防御はでき
 ず、攻撃の緩衝材程度の働きに限定される。

 
 
 クロノはフォルスの姿を見つける。彼は集落の男達を率いているようだった。
 
 
「どうなってるんだ!?」
「っち、奴等も察知してるわけだ。」
「察知?」

 
 
 家の前に武装して立っているフォルス。彼はは頭を掻きながら答える。
 
 
「見ての通りの有り様さ。暇も与えないつもりらしい。ブランカの研究を見たろ?」
「あぁ。」
「こちらはこのシールドで阻むので精一杯だが、リストガンが完成すれば形勢は逆
 転する。その前に叩くのがゲルディの野郎の考えなんだろう。
 …そうはさせねぇ!!!
 
 
 フォルスは語気を強めて言い終えると、走り出し周囲に叫ぶ。
  
 
「みんな!奴等の好きなようにはさせねぇぞ!」
「おお!!!!」

 
 
 フォルスがそう叫ぶと、他の若者達も彼の後に続いた。
 クロノも彼らの後を追おうとすると、もう一人彼らを追おうとする者がいた。ク
ロノは思わず肩に手を置き止めた。
 
 
「トーヤは家にいろ。フォルスの後は俺が追う。」
「俺も行く!」
「危険だ!」

「そんなのここじゃ当たり前だ!」
駄目だ!…お前はここにいろ。」
「何で?…いつも俺は戦ってるんだぞ。」

 
 
 トーヤの真剣なまなざし。
 彼の目は確かにここではそういう戦いをせざるを得ないだろうことを物語ってい
る。だが、この歳で命の駆け引きをさせるのを見過ごす事は許せなかった。人はそ
れを偽善と言うかもしれない。だが、戦いにもルールはある。
 
 
「なら、ここで皆を守れ。俺達が離れている間を守ることは重要な任務だろ?」
「…わかったよ。」
 
 
 クロノもフォルス達の後を追って走り始める。
 攻撃は島の中央にあるラミラの丘の方角から来ていた。
 フォルス達が駆け上がると、そこでは既に他のルッカハウス側の小隊が戦闘を繰
り広げていた。 そしてなんと、そこにはシズクの姿があった。
 
 
「そこ、迂闊よ!」
 
 
 シズクの鉄拳が炸裂する。
 懐に思いっきり入ったパンチによって、囚人兵はいとも容易く空高く吹っ飛ばさ
れて消えた。そんな仲間の姿を見て一瞬たじろぐ囚人兵達だが、その中の一人が彼
女に対して勇敢にも突撃を開始した。すると、それを見て後に続けとばかりに、沢
山の他の囚人兵達もシズク目掛けて攻撃し始める。
 彼らにとってシズクは越えねばならぬ壁であり、それを達成したものはまさに英
雄といっても過言ではない図式が頭の中に広がっていた。しかし、その図式はほん
の一瞬の夢に終わる。
 
 
「勇敢さは認めてあげるわ!!」
 
 
 そういうとシズクは指先からサンダーを走らせた。一瞬にして勇敢にも突撃をし
た最初の一人が感電、その後方の一人も突然感電した仲間に触れて感電し吹っ飛ば
された。
 それでも怯まなず無事な囚人兵は突撃を続けた。しかし、シズクは驚くほど素早
く掛かってくる囚人達の懐にパンチを入れると、先程の飛ばされた囚人と同じ方角
へ向けて蹴り飛ばしてしまった。
 勝負はあっという間に着き、そして敵はいなくなった。
 
 
……、っと…、シズク!
 
 
 クロノはあまりの手際よさに、味方ながら内心たじろぎつつも呼びかけた。
 彼女もクロノの姿を見て喜んで言った。
 
 
「あら、クロノ!ようやく目覚めたのね!でも、残念!私一人で全部やっつけちゃ
 おうと思ったのに。」
「あ、あはは、そ、そうだったのか。そりゃ悪い事した。」
 
 
 クロノは内心彼女の力に恐怖を感じつつ、確かに彼女の言う通り思っていたより
囚人単体の力は弱い様に思った。
 彼女は腕組みして白けながら言った。
 
 
「…しかし、この程度ならなんとかなりそうね。」
「そ、そうだな。シールドもあるし、やり方次第という感じか?」
「そうね。でも、油断は禁物かしら。さっきのエレメント攻撃は随分高度な感じが
 したわ。たぶん、かなり出来る人間がいるんだと思う。そいつが厄介って感じか
 しら。」
 
 
 彼女は既に先程の攻撃でそこまで考えている。…クロノは彼女の素性が少々気に
なった。彼女はどの程度の未来の歴史を知り、そして介入しているのだろうか?
 そこにフォルスが彼女に近付いて話し掛けた。
 
 
「あれが魔法か?」
「そうよ〜。」
「あれで序の口なんだろ?」
「そうね。実力の半分も出してないかな。」
 
 
 シズクがそういってにんまり笑う。フォルスはそんな彼女に頼もしいものを感じ
た。だが、ゆっくりしていられそうも無い様だった。森の奥から気配がする。
 全員がそれを感じ一斉に構えた。
 敵は隠す風でも無くゆっくりと堂々と現れた。
 
 
「ヘッヘッヘ、今回は強い仲間がいるんだな?」
「ちっ、ゴンジめ!」
 
 
 ゴンジと呼ばれた男は年齢は若く、身長は小柄な男で見るからに品の無い顔をし
ていた。彼は不敵な笑みを浮かべて言った。
 
 
「お前等の勢力もあと僅かだろう?
 もう島の4分の3は俺達のものだからな。」
「馬鹿言うなよ。」

 
 
 フォルスが問答無用で銃撃を開始する。
 一斉に小隊が発砲するが、フォルスの銃撃は相手の防御シールドで阻まれる。
 
 
!?いつの間に!?」
「お前等のシールド限界は既に分かっている。だが、俺達のシールド限界はわかる
 まい。これの意味することがわかるか?」
「…っち」
 
 
 フォルスが舌打ちして苦々しい顔をして睨む。
 そこにシズクがつかつかと前に割って入る。
 
 
「あんた達のシールド限界なんてたかが知れてるわ。その阿呆頭で扱うものなんて
 穴だらけだもの。」
「んだとぉ!?!」
「あら?図星なんじゃないの?現にこうしてシールド外に出て攻撃してるじゃない?
 ここは丁度あんた達とこちらの境界の真空地帯ってとこかしら?」
「くぅ、やれ!!
 
 
 ゴンジが叫ぶと他の囚人達が一斉にエレメントを発射する。
 
 
「後退よ!」
 
 
 シズクはそう言うとトラップエレメントで周囲を保護して、ほんの3mまで全員
を後退させる。…案の定、彼等の攻撃はシールドに阻まれた。
 
 
「ほらほら、私の言う通りじゃない?」
くそ!嘗めたまねを!こっちには女がいるんだぞ!
卑怯ね!でも、私がそんなことで怯むと思って?」
「んだと!?」
「お、おい!」
 
 クロノが焦る。そんな彼に構わずシズクは突然、自ら走り出してシールドを出た。
そして、そのままゴンジ達敵の直中に入って行く。
 突然の行動に双方が驚いた。
 
 
「気でも狂ったか?」
「ううん、その逆よ?」

 
 
 シズクはニヤリと笑みをこぼすと周囲にファイアを放った。シズクの手から放た
れた炎がゴンジ達を焦がす。
 
 
「ぐぁああ!、なんだこの女!!!ぐぁっち!
 消火だ!おい!お前等!?!」

 
 
 ゴンジが周囲に消火を求めるが、求められた周囲の囚人達は自分達の消火で手一
杯で、消火どころか一斉に後退して行った。
 
 
「っち、ここまでか。はん、勝ったと浮かれてるが良い!
 今頃お前等の家は火の海だ!へへへ!

 
 
 彼女は静かに魔力を練ると言った。
 
 
「それはあんたのおしりよ!!!」
「!?!」

 
 
 シズクはゴンジに対して更に出力を上げてファイアを放つ。
 ゴンジは驚いて素早く撤退し始めた。その逃げ足は先に逃げた囚人達を追い抜く
程。…おかげで後を追う炎で逃げ遅れた囚人達が焦がされた。
 
 
「…凄いな。」
「…あぁ。」
 
 
 クロノもフォルスも彼女の一方的な戦いに、脅威を感じつつも感心した。この手
際の良さは勉強になると。
 
 
「しかし、奴の言った事が気になる。…家に戻るぞ!」
 
 
 フォルスは号令を出すと若者達は家へ戻りはじめる。その際、クロノはシズクに
近寄り話し掛けた。
 
 
「なぁ、さっきは何で奴等の直中に入ったんだ?」
「あ、あれはシールド外部にいれば阻まれるけど、中ならちゃんと魔法の効果が効
 くからよ。」
「…なるほど。」
 
 
 クロノは納得すると、二人もフォルス達の後を追う。

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